Invisalign Clinical Essentials Faculty Editionに参加しました| How to Manage Complex Cases in Growing Patients with Invisalign ~成長期の複雑な症例をインビザラインでどのように治療するか~
こんにちは。川西市のスマイルプラス矯正歯科です。
2026年7月16日、TKPガーデンシティPremium京橋で開催された 「Invisalign Clinical Essentials Faculty Edition」 に参加しました。
今回の講演は、イタリアの矯正歯科医 Francesco Garino先生による
「How to Manage Complex Cases in Growing Patients with Invisalign」
というタイトルの講演でした。

Garino先生による「How to Manage Complex Cases in Growing Patients with Invisalign」の講演。
Garino先生は、Align Faculty(アラインファカルティ。一般には「インビザラインファカルティ」と呼ばれることもあります)として教育活動にも携わっておられます。
タイトルからは、成長期の難しい症例をマウスピース矯正(インビザライン)でどのように治療するかという、テクニック中心の講演を想像していました。
しかし、実際に受講して感じたのは、それだけではありませんでした。
私には、
「矯正治療とは何か」
という本質を改めて考えさせられる講演だったように思います。
私とGarino先生の忘れられない思い出
今回の講演を聴きながら、2014年DGAOでの講演を思い出しました。
当時、ドイツアライナー矯正研究会でGarino先生が講演され、日本ではまだ販売されていなかった口腔内スキャナー「iTero」を紹介されていました。
講演の中で先生は、シリコーン印象(PVS)を
Traditional impression
と表現されていました。
もちろん、「従来の印象採得法」という意味だったのでしょう。
しかし、その頃の日本では、iTeroそのものを購入することさえできませんでした。
一方で、Garino先生が使われていたのは初代ではなく、すでに数世代進化したiTeroでした。日本ではまだ導入できない機器が、ヨーロッパではすでに日常診療で使われていたのです。
そのため私には、「昔はシリコーン印象で歯型を採っていたんですよ」と昔話をされているように聞こえてしまいました。
今思えば、多少のひがみもあったのだと思います。
それ以上に感じたのは、
「日本は、デジタル歯科の分野で世界から大きく遅れているのではないか」
という悔しさでした。
その後、日本でようやく発売されたのがiTero 2.9でした。私は比較的早い時期に導入しましたが、その頃にはヨーロッパではすでに次世代機のiTero Elementへ移行が始まっていました。
つまり、日本で「最新機種」を導入したつもりでも、海外ではすでにさらに新しい世代へ進んでいたのです。
だからこそ私は、「海外で当たり前になっている技術を、日本でもできるだけ早く患者さんへ届けたい」という思いを持ち続けるようになりました。
Garino先生の講演を聞くたびに、「世界のスタンダードを学び、日本の患者さんへできるだけ早く届ける」という自分の診療スタイルの原点を思い出させてくれる、大切な出来事です。
矯正治療とは、歯を動かすことではなく診断すること
一般的には、
「矯正治療=歯並びをきれいにすること」
というイメージを持たれている方が多いと思います。
もちろん歯並びを整えることは大切です。
しかし、矯正治療で最も重要なのは、歯を動かすことではありません。
患者さんを正しく診断し、治療目標を決めること。
それが矯正治療の出発点です。
どの歯を、
どこへ、
どの順番で、
どれだけ動かすのか。
その設計図を描くことこそが、矯正医の仕事です。
矯正装置は、その治療目標を達成するための手段であり、目的ではありません。
Garino先生も、
「デジタルが治療するのではない。治療するのは矯正医である。」
という考え方を何度も話されていました。
私は以前から、
「装置が治療するのではなく、矯正医が治療する」
ということを大切にしています。
今回の講演は、その考え方を改めて確認できる内容でした。
技術は進歩しても、診断力は省略できない
矯正治療を取り巻く環境は、この数十年で大きく変化しました。
昔は、
バンドを合わせ、
ブラケットを溶接し、
一本一本ワイヤーを曲げる技術が必要でした。
その後、
ダイレクトボンディングシステム、
ストレートワイヤー法、
Ni-Tiワイヤーなどが登場し、
治療は以前よりシンプルになりました。
そして現在では、
口腔内をスキャンし、
ClinCheckを作成し、
マウスピース矯正を始めることができます。
患者さんにとっては、とても良い時代になったと思います。
しかし、
治療を始めることが簡単になったからといって、
診断まで簡単になったわけではありません。
私はむしろ、
治療を始めるハードルが下がったからこそ、診断力の差が結果に大きく表れる時代になった
と感じています。
便利な時代だからこそ、
診断力の重要性は、以前にも増して高くなっているのではないでしょうか。
Plan Aだけではなく、Plan Bを持つ
今回の講演では、
Plan Aだけではなく、Plan Bを持つこと
が何度も強調されていました。
私は、この言葉を
「アライナーだけですべて治療しましょう」
という意味ではなく、
「本当に矯正治療を理解していますか?」
という問いかけとして受け取りました。
予定どおり歯が動かなければ、
部分的にブラケットとワイヤーを使う。
必要であればエラスティックを併用する。
つまり、
アライナーしかできないのではなく、ブラケット矯正も理解した上でアライナーを選択する。
それが本当の意味でのアライナー矯正なのだと思います。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」
今回の講演では、
Hit and Quit
という考え方も紹介されました。
必要な部分だけ短期間介入し、
目的を達成したら次のステージへ進む。
私はこの考え方を聞いて、
「二兎を追う者は一兎をも得ず」
ということわざを思い出しました。
現在のClinCheckでは、
すべての歯を一度に最終位置まで動かす治療計画も簡単に作成できます。
しかし、
現実の患者さんはコンピューターの中のシミュレーションどおりにはいきません。
複雑な症例ほど、
一度にすべてを解決しようとするのではなく、
その時点で最も重要な課題を一つだけ確実に解決する。
そして、
また評価し、
次の課題へ進む。
その繰り返しが、
最終的には理想的なゴールへつながります。
私はこの考え方に、
イチロー選手の
「小さいことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。」
という言葉にも通じるものを感じました。
追加アライナーは失敗ではない
この考え方は、
追加アライナーについても同じだと思います。
もちろん、
予定外の追加アライナーを何度も繰り返すことは望ましいことではありません。
しかし、
Garino先生が伝えたかったのは、
計画的な追加アライナー
という考え方だったのではないでしょうか。
現在地を確認し、
次の目標まで進み、
再評価して、
さらに次の目標へ進む。
ゴルフで例えるなら、
フェアウェイへ確実に刻みながらグリーンを目指すような治療です。
追加アライナーは、
必ずしも失敗ではありません。
治療の精度を高めるために、
必要なタイミングで現在地を確認する。
そのための治療計画の一部なのだと理解しました。
私が感じたこと
今回の講演を通して、改めて感じたことがあります。
矯正治療とは、
単に歯を動かすことではありません。
患者さんを診断し、
治療目標を決め、
その目標へ最も安全で確実なルートを選択すること。
アライナーなのか、
ブラケットなのか、
あるいは両方を組み合わせるのか。
それは目的ではなく、治療目標を達成するための手段です。
私はこれからも、
新しい装置や新しいテクニックを学ぶだけではなく、
診断力を磨き続けることを大切にしながら、
患者さん一人ひとりに最適な矯正治療をご提供していきたいと思います。
学びを患者さんへ還元するために
学会やセミナーへ参加する目的は、新しい知識や技術を学ぶことだけではありません。
さまざまな考え方に触れ、自分自身の診断や治療計画を見直し、より良い治療につなげることにあります。
今回の講演でも、「どの装置を使うか」ではなく、「どのような診断を行い、どのような治療目標を設定するか」が最も重要であることを改めて実感しました。
これからも国内外の学会やセミナーで学び続け、その経験を日々の診療へ活かし、患者さん一人ひとりにより質の高い矯正治療をご提供できるよう努めてまいります。
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院長 山本 昌宏
(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医)

