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Invisalign Clinical Essentials Faculty Editionに参加しました| Predictability in adolescent asymmetries: diagnosis, biomechanics and ClinCheck optimization ~成長期の左右非対称を予測どおりに治療するための診断・メカニクス・ClinCheck最適化~

Invisalign Clinical Essentials Faculty Edition セミナータイトルスライド(2026年7月16日)

こんにちは。川西市のスマイルプラス矯正歯科です。

2026年7月16日、
TKPガーデンシティPremium京橋で開催された
「Invisalign Clinical Essentials Faculty Edition」に参加しました。

今回ご紹介するのは、イタリアの矯正歯科医、Federico Migliori先生による

「Predictability in adolescent asymmetries: diagnosis, biomechanics and ClinCheck optimization」

という講演です。

Federico Migliori先生によるInvisalign Clinical Essentials Faculty Editionでの講演(2026年7月16日)

Federico Migliori先生による「Predictability in adolescent asymmetries: diagnosis, biomechanics and ClinCheck optimization」の講演。

Migliori先生は、Align Faculty(アラインファカルティ。日本では一般には「インビザラインファカルティ」と呼ばれることもあります)として、インビザライン治療の教育活動にも携わっておられます。

今回のテーマは、成長期にみられる左右非対称、いわゆるAsymmetryを、どのように診断し、どのようなメカニクスを用い、どこまで予測どおりに治療へ反映させるか、というものでした。

インビザラインは非常に優れた装置ですが、ClinCheck上で設定したとおりに、すべての歯が100%動くわけではありません。

だからこそ重要になるのが、

「どのように動かすか」だけではなく、「どこまでなら予測どおりに動かせるのか」を考えた治療計画

です。

Migliori先生の講演は、成長期の左右非対称に焦点を当てながら、治療の予測性を高めるための診断と設計について考えさせられる内容でした。


左右非対称は「治す」前に「見極める」

講演の中で、まず印象に残ったのは、

「人の顔や身体は、もともと完全な左右対称ではない」

という考え方です。

確かに、左右の目の高さ、頬の張り方、口角の位置、肩の高さまで、完全に同じ人はほとんどいません。

普段はそれほど気にならなくても、顔写真を左右反転したり、片側だけを鏡像にして比較したりすると、思っていた以上に左右差があることに気づきます。

左右非対称を気にして来院される患者さんも、

「顔が曲がって見える」

「顎が横にずれている気がする」

「前歯の真ん中が合っていない」

「片側だけかみ合わせにくい」

など、さまざまな表現で相談されます。

ただし、同じように「ずれて見える」場合でも、その原因は一つではありません。

歯の位置による左右差なのか。

上下の顎の骨格による左右差なのか。

成長の途中で生じている機能的な偏位なのか。

あるいは、それらが複数重なっているのか。

原因によって、治療方法も治療の限界も大きく異なります。

私自身も、矯正治療では「どの歯を動かすか」を考える前に、

「なぜ、この左右差が生じているのか」

を見極めることが大切だと考えています。

左右差があるからといって、すべてを歯の移動だけで左右対称にしようとすると、かえって無理のある治療計画になることもあります。

まず原因を診断し、矯正治療で改善できる部分と、改善が難しい部分を分けて考える必要があります。


完全な左右対称が、必ずしも治療目標ではない

患者さんは、左右の歯並びや正中が少しずれていると、「全部きれいに左右対称にしたい」と考えられることがあります。

矯正歯科医も、デジタル上の治療計画を見ていると、左右をそろえ、正中を一致させ、すべてを整えたくなります。

ただ、人間の顔や骨格は、もともと完全な左右対称ではありません。

骨格的な左右差があるにもかかわらず、歯だけを無理に左右対称へ近づけようとすると、歯を必要以上に傾斜させたり、歯列全体に無理な移動を加えたりすることがあります。

大切なのは、コンピューター上で完全な左右対称を作ることではありません。

患者さんの骨格や成長、歯を支える骨の状態を踏まえたうえで、どこまで改善することが現実的で、安定しやすいのかを判断すること

です。

見た目の左右差を改善することはもちろん重要です。

しかし、治療後の安定性や歯の健康を犠牲にしてまで、数値上の完全な対称性を追求するべきではないと私は考えています。


歯を動かし過ぎるほど、予測性は低くなる

今回の講演で、特に印象に残ったのが、

必要以上に歯を動かさない

 

という考え方でした。

ClinCheckでは、治療開始から終了までの歯の移動をコンピューター上で確認できます。

画面上では、

「もう少し正中を合わせたい」

「こちらの歯も少し動かしたい」

「左右をもっとそろえたい」

と、さまざまな修正を加えることができます。

しかし、設定した移動量が増えれば増えるほど、実際の口腔内との誤差が生じる可能性も高くなります。

一つひとつの歯の移動誤差は小さくても、それが複数の歯に積み重なると、最終的には計画と実際の歯並びに大きな差が生じることがあります。

つまり、

ClinCheck上で理想的に見える治療計画が、必ずしも臨床的に予測性の高い治療計画とは限りません。

 

すべてを一度に解決しようとするのではなく、必要な歯を、必要な方向へ、必要な量だけ動かす。

その方が、結果として計画どおりに進みやすくなります。

私は以前から、治療計画を立てる際には、

「動かせるから動かす」のではなく、「動かす必要があるから動かす」

ことが重要だと考えています。

Migliori先生の講演は、その考えをあらためて確認させてくれる内容でした。


ClinCheckは完成図ではなく、治療の設計図

インビザライン治療では、ClinCheckという3D治療計画ソフトを使用します。

患者さんから見ると、ClinCheckの最終画面は、治療後の完成予想図のように見えるかもしれません。

しかし、ClinCheckは将来を正確に予言するものではありません。

あくまで、矯正歯科医が立てた治療計画を、コンピューター上で可視化した設計図です。

私はClinCheckを、建築や工業製品のCADに近いものだと考えています。

設計図がきれいに描かれていることと、その設計どおりに完成することは同じではありません。

患者さんのお口の中では、

  • 歯根の形
  • 歯を支える骨の状態
  • 骨の硬さ
  • 歯の傾斜
  • アライナーの適合状態
  • 装着時間
  • ゴムかけへの協力度
  • 成長による変化

など、多くの要素が治療結果に影響します。

そのため、ClinCheckを作成するときには、単に理想的な歯並びを設定するだけでは不十分です。

どの歯の移動が予測しやすく、どの移動が難しいのか。

計画どおりに進まなかった場合、どのように修正するのか。

そこまで考えたうえで治療計画を立てる必要があります。

最初から一切の修正が不要な治療計画を作る、というよりも、

途中で評価し、必要に応じて修正しやすい治療計画を作る

ことが、現実の矯正治療では重要です。


成長期だからこそ、歯の移動だけを見ない

今回の講演は、特に成長期の患者さんを対象としていました。

成長期の矯正治療では、成人の矯正治療とは異なり、治療中にも顎や顔貌が変化します。

治療開始時には小さかった左右差が、成長とともに目立つようになることもあります。

反対に、機能的な偏位を早期に改善することで、成長とともに左右差が小さくなることもあります。

そのため、治療開始時の歯並びだけを見て、治療終了時の状態を一度に決めることはできません。

成長の方向を確認しながら、

  • 今すぐ改善するべき部分
  • 成長を観察する部分
  • 次の治療段階で対応する部分

を分けて考える必要があります。

成長期の治療では、すべてを最初のアライナーシリーズで完成させようとしないことも大切です。

成長を利用できる部分は利用し、成長を待つべき部分は待つ。

そのうえで、必要な時期に必要な治療を加える。

私は、このような段階的な治療計画の方が、成長期の患者さんには合っていると考えています。


垂直的なコントロールも左右差に影響する

左右非対称というと、横方向のずれだけに注目しがちです。

しかし、実際には左右の歯の高さやかみ合わせの深さといった、垂直的な違いが非対称に関係していることもあります。

例えば、片側だけ奥歯が高くなっている場合や、片側だけ強くかみ込んでいる場合には、下顎が横へ誘導されることがあります。

このような場合、単に前歯の正中だけを合わせても、左右差の原因そのものは改善しません。

どの歯を挺出させるのか。

どの歯の挺出を抑えるのか。

かみ合わせの高さをどのように調整するのか。

左右差を改善するためには、横方向の歯の移動だけではなく、垂直方向のコントロールも重要になります。

Migliori先生は、左右非対称の治療において、こうした垂直的なメカニクスについても詳しく解説されていました。


アライナーだけで治すことが目的ではない

Migliori先生は、アライナーだけではなく、エラスティック、いわゆる顎間ゴムや補助的なメカニクスも積極的に活用されていました。

インビザライン治療だからといって、

すべてをアライナーだけで治さなければならない

 

わけではありません。

アライナーが得意な歯の移動もあれば、苦手な歯の移動もあります。

ゴムかけを併用した方が、歯や顎にかかる力の方向をコントロールしやすい場合もあります。

必要に応じて補助装置を使用した方が、治療期間を短縮できることもあります。

大切なのは、「アライナーだけで治した」という方法ではなく、

患者さんにとって、より安全で、より確実で、より予測性の高い結果を得ること

 

です。

アライナーは非常に優れた装置ですが、万能ではありません。

アライナーの特性を理解し、必要な補助装置を適切に組み合わせることも、矯正歯科医の役割です。


予測性を高めるために、計画を複雑にし過ぎない

デジタル技術が進歩すると、コンピューター上では非常に複雑な歯の移動を設定できるようになります。

しかし、設定できることと、実際に予測どおり再現できることは同じではありません。

治療計画を複雑にし過ぎると、どこで誤差が生じたのか分かりにくくなります。

また、一つの歯が計画どおりに動かなかっただけで、その後の複数の歯の移動に影響が及ぶこともあります。

だからこそ、

  • 治療目標を明確にする
  • 優先順位を決める
  • 必要な歯だけを動かす
  • 難しい移動を一度に重ね過ぎない
  • 途中で評価する

という考え方が重要になります。

必要最小限の治療計画というのは、手を抜いた治療計画ではありません。

むしろ、

治療目標を達成するために、本当に必要な歯の移動だけを選び取った治療計画

 

です。

今回の講演を通して、治療計画は複雑であるほど優れているのではなく、シンプルであるほど予測性が高まる場合があることを再確認しました。


まとめ

今回のMigliori先生の講演では、成長期の左右非対称をテーマに、

  • 左右差の原因を見極めること
  • 歯性と骨格性の非対称を区別すること
  • 成長による変化を考慮すること
  • 必要以上に歯を動かさないこと
  • 垂直的なかみ合わせも確認すること
  • アライナー以外の補助的なメカニクスも活用すること
  • ClinCheckを予測性の高い設計図として作ること

の重要性を学びました。

インビザライン治療は、ClinCheckが自動的に行うものではありません。

ClinCheckを作成するのも、その計画が現実的かどうかを判断するのも、治療途中で修正するのも矯正歯科医です。

AIやデジタル技術が進歩しても、

患者さんを診断し、治療目標を決め、必要な歯の移動を選択する

という基本は変わりません。

今回の講演は、複雑な左右非対称の治療であるからこそ、治療計画を必要以上に複雑にせず、予測性の高い方法を選ぶことの大切さを改めて考えさせてくれる内容でした。


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