ABAO TEAM ORTHODONTICS FORUM 2026に参加しました|賀久浩生先生 ~アライナー治療のクオリティを高める「チーム」のつくり方~
こんにちは。川西市のスマイルプラス矯正歯科です。
2026年8月8日、東京・ワテラスコモンホールで開催された「ABAO TEAM ORTHODONTICS FORUM 2026」に参加し、私自身も講演させていただきました。
今回ご紹介するのは、賀久浩生先生による
「チームであげるアライナー治療のクオリティ」
という講演です。
アライナー治療というと、どうしてもClinCheckやアタッチメント、エラスティック、ステージングなど、矯正医側の技術に注目が集まりがちです。
しかし実際の診療では、患者さんと接する時間の多くをスタッフが担っています。
装着時間は守れているのか。
アライナーはきちんとフィットしているのか。
アタッチメントが外れていないか。
患者さんが困っていることはないか。
治療へのモチベーションは落ちていないか。
こうした小さな変化を日々拾い上げるのは、歯科医師だけではありません。
賀久先生の講演は、
質の高いアライナー治療を行うためには、優れた矯正医一人ではなく、優れたチームが必要
ということを改めて考えさせられる内容でした。
「現状維持」は、実は現状維持ではない
講演の冒頭では、慶應義塾大学の伊藤塾長の卒業式スピーチなどを引用しながら、日本社会が長く「失われた30年」と呼ばれる停滞の中にあったことについて触れられていました。
世界が進歩している中で、自分たちだけが同じ場所にとどまっていれば、それは実質的には後退しているのと同じです。
矯正歯科の世界も同じです。
少し前まで、
口腔内スキャナーも、
ClinCheckも、
アライナーによる小児矯正も、
AIを利用した診療支援も、
今ほど当たり前ではありませんでした。
だからこそ、
「今うまくいっているから、このままでいい」
ではなく、常に新しいことを学び、自分たちの診療を少しずつアップデートしていく必要があります。
私自身も、新しい装置や技術をそのまま受け入れるのではなく、本当に患者さんにとって有益なのかを考えながら取り入れていくことを大切にしています。
良いチームがあると、治療の質も上がる
賀久先生は、良いチームがもたらすメリットとして、
- ストレスが減る
- 無駄が減る
- 仕事の効率が上がる
- 患者さんからの紹介が増える
- チーム内の絆が深まる
といった点を紹介されていました。
これは歯科医院に限らず、どんな組織でも同じだと思います。
一人で全部抱え込めば、どうしても見落としが増えます。
一方で、それぞれが自分の役割を理解し、相談できる環境があれば、
「これはいつもと違う」
「この患者さん、最近少し装着時間が落ちているかもしれない」
「このアライナー、少し浮いている」
といった小さな変化を早い段階で共有できます。
矯正治療では、こうした早期発見がとても重要です。
問題が小さいうちに対応できれば、大きなトラブルになる前に修正できます。
まず、自分たちの「立ち位置」を知る
良いチームを作るための第一歩として、賀久先生は、
自分たちが今どこにいるのかを知ること
を挙げられていました。
例えば、
成人患者さんが多いのか。
小児患者さんが多いのか。
アライナー治療が多いのか。
固定式装置が多いのか。
スタッフの得意分野は何なのか。
医院として何が強みで、何が弱みなのか。
こうしたことを何となく感じるだけではなく、できるだけ客観的に把握する。
そして、その現状をスタッフとも共有する。
これは非常に大切なことだと思います。
目標を立てるにしても、現在地が分からなければ、どこへ向かえばよいのか分かりません。
目標は、増やし過ぎない
目標設定については、ウォーレン・バフェットの有名な考え方も紹介されていました。
やりたいことを25個挙げ、その中から本当に重要な5つを選ぶ。
そして、残りの20個にはむしろ手を出さない。
つまり、
何でも少しずつ頑張るのではなく、優先順位を決めて集中する
という考え方です。
これは医院運営にもよく当てはまります。
患者さんへの説明をもっと良くしたい。
写真撮影を統一したい。
アライナーのチェック精度を上げたい。
MFTを強化したい。
スタッフ教育を充実させたい。
やりたいことを挙げれば、いくらでも出てきます。
しかし、一度に全部を変えようとすると、結局どれも中途半端になりやすい。
だからこそ、
今、このチームにとって最も重要な課題は何なのか
を絞ることが大切なのだと思います。
ジェネラリストではなく「スペシャリスト」を育てる
賀久先生の講演で、特に印象に残ったのがここです。
すべてのスタッフが何でも同じようにできることを目指すのではなく、
それぞれが得意分野を持つスペシャリストになる
という考え方です。
例えば、
アライナーのフィット確認が得意なスタッフ。
患者さんへの装着説明が得意なスタッフ。
MFTが得意なスタッフ。
写真撮影や口腔内スキャンが得意なスタッフ。
カウンセリングが得意なスタッフ。
それぞれの強みを伸ばし、その分野については院内で一番詳しい人になる。
そうすると、スタッフ自身にも責任感や自信が生まれます。
院長がすべてを教え、すべてを判断する医院ではなく、
それぞれが専門家としてチームを支える医院
になるわけです。
スペシャリストは、どう育つのか
講演では、スペシャリスト育成の流れについても紹介されていました。
まずは知識を学ぶ。
次に実際に経験する。
その後、本当に上手な人の仕事を見る。
そして、
「自分もこうなりたい」
という欲求を持つ。
最後に、その差を埋めるために自分で考え、工夫し、実現していく。
この流れです。
私はここで、
「本物を見る」
という部分がとても大切だと感じました。
文章を読んだり、マニュアルを見たりするだけでは分からないことがあります。
上手な人がどんな言葉を使っているのか。
どこを見ているのか。
どのタイミングで患者さんに声を掛けているのか。
実際の仕事を見ることで、初めて分かることがあります。
スタッフ同士でロールプレイングをしたり、経験のあるスタッフの診療を見たりすることも、そのための良い方法だと思います。
「できるかどうか」ではなく「どうすればできるか」
もう一つ大切なのが、グロースマインドセットです。
新しい仕事を任されたとき、
「自分にはできないかもしれない」
と考えるのではなく、
「今はできないけれど、どうすればできるようになるだろう」
と考える。
この違いは大きいと思います。
もちろん、何でも「絶対できる」と精神論だけで押し切る話ではありません。
できない理由を分析し、
知識が足りなければ学ぶ。
経験が足りなければ練習する。
上手な人を見た方がよければ見学する。
そうやって一つずつ埋めていく。
成長するチームには、この姿勢が必要なのだと思います。
人は「環境」に大きく影響される
賀久先生は、人が成長するためには環境が非常に重要だという話もされていました。
例えば、周りの人が全員、
「このくらいでいいでしょう」
という雰囲気なら、それが自分にとっての普通になります。
逆に、
「もっと良くするにはどうしよう」
「昨日より今日の方が上手くなりたい」
と考えている人たちに囲まれていれば、それが普通になります。
米国のオリンピック水泳チームのように、周囲にトップレベルの選手がいる環境では、非常に厳しい練習でも「特別なこと」ではなく「日常」になります。
医院も同じなのだと思います。
勉強すること。
振り返ること。
失敗を共有すること。
新しいことに挑戦すること。
それが特別なイベントではなく、
日常になっているチーム
を作ることが大切です。
卓越した治療は、派手なことの積み重ねではない
講演では、
Mundanity to Excellence
という考え方も紹介されていました。
卓越した結果は、毎回特別なことをすることで生まれるのではなく、
当たり前のことを、当たり前に高いレベルで繰り返すこと
によって生まれる。
これは矯正治療にも非常によく当てはまります。
アライナーがきちんと入っているか確認する。
アタッチメントの脱離を確認する。
写真を正確に撮る。
患者さんの装着時間を確認する。
ゴムの使い方を説明する。
前回との変化を見る。
一つひとつは派手な仕事ではありません。
しかし、この「普通のこと」の質が低ければ、どれだけ素晴らしいClinCheckを作っても良い治療にはなりません。
逆に、
小さなことを毎回確実に行うチームは強い。
これは非常に納得できる話でした。
リーダーは院長だけではない
そして講演の最後に、とても印象的な話がありました。
チームのリーダーは院長だけではない
ということです。
患者さんへの説明がとても上手なスタッフがいれば、その場ではその人がリーダーです。
新人にスキャンを教えるスタッフがいれば、その時はその人がリーダーです。
困っている仲間に声を掛ける人もリーダーです。
つまり、
自分の行動によって周囲の人が少し良い方向へ動くのであれば、その人はリーダー
だという考え方です。
院長が一人でチームを引っ張るのではなく、
全員が自分の役割の中でリーダーシップを発揮する。
そんなチームであれば、医院全体のレベルも自然に上がっていくのだと思います。
TEAMという言葉
講演では、
TEAM = Together Everyone Accomplishes More
という言葉も紹介されていました。
直訳すれば、
「みんなで力を合わせることで、一人ではできないことをより多く成し遂げる」
という意味です。
矯正治療は、まさにそうだと思います。
矯正医だけではできません。
歯科衛生士。
受付。
歯科技工士。
そして患者さん自身。
それぞれが役割を果たすことで、初めて良い治療結果につながります。
私が感じたこと
今回の賀久先生の講演を聞いて、改めて考えたことがあります。
アライナー治療は、デジタル化によって非常にシステマティックになりました。
しかし、
デジタル化されたから、人がいらなくなったわけではありません。
むしろ、
ClinCheckをどう評価するか。
患者さんの小さな変化を誰が見つけるか。
装着できない理由を誰が聞くか。
問題が起きたとき誰が気づくか。
治療を続けるモチベーションを誰が支えるか。
こうした部分では、チームの力がますます重要になっています。
優れたアライナー。
優れたClinCheck。
優れた矯正医。
それだけでは十分ではありません。
優れたチームがあって初めて、治療のクオリティを安定して高く保てる。
今回の講演は、矯正治療そのものだけではなく、自分の医院のチームについても改めて考える良い機会になりました。
川西市・池田市・伊丹市・宝塚市・猪名川町で矯正治療をご検討の方へ
スマイルプラス矯正歯科では、矯正歯科医だけではなく、スタッフ全員で患者さんの治療をサポートすることを大切にしています。
アライナーの適合状態や装着状況、口腔衛生、患者さんが困っていることなどをチームで共有しながら、治療を進めていきます。
矯正治療は長い期間のお付き合いになることもあります。
だからこそ、治療技術だけではなく、患者さんが安心して通院を続けられる環境づくりも大切だと考えています。
スマイルプラス矯正歯科
院長 山本昌宏
歯学博士・日本矯正歯科学会認定医

