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非外科矯正で難症例に対応する診断哲学|Tweed-MACとBiocreative Strategy講演レポート

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今回の講演から分かった重要ポイント

・Tweed-Merrifield-Alexanderの流れを発展させたTweed-MAC分析により、骨格と軟組織を統合した診断が可能になる
・Tripod principleとTSADにより、従来は外科矯正が必要と考えられていた症例でも非外科的治療の可能性が広がっている
・ATOZ Expanderのような骨格性拡大装置により、成人症例でも安定した上顎拡大が期待できる


こんにちは。
川西市の歯並び専門の歯医者、スマイルプラス矯正歯科の山本昌宏(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医・アラインファカルティ)です。

2026年4月12日(日)、大阪市天満橋の大阪歯科大学 西館5階 臨床講義室にて開催された大阪歯科大学歯科矯正学講座 同門会総会・学術講演会に参加しました。

今回は慶熙大学 歯科矯正学講座 主任教授であるSeong-Hun Kim先生による

Non-Surgical Mastery of Complex Orthodontic
(複雑症例に対する非外科的矯正治療の真髄)

という講演を拝聴しました。

外科手術を併用せずに難症例へ対応するための診断哲学と治療戦略について、多くの学びがありましたので共有いたします。


なぜ難症例でも非外科矯正が可能なのか?

Kim先生の治療哲学の中心となるのがBiocreative Orthodontic Strategy(BOS)です。

BOSでは歯並びのみを評価するのではなく

骨格
軟組織
気道
筋機能
顎関節

といった複数の要素を統合的に評価します。

特に重要とされているのが「TAKE ACTION」という10項目です。

Tripod principle
Airway(気道)
Keep an eye on growth(成長評価)
E=MC²(効率的な力学設計)
Alveolar bone(歯槽骨)
Condylar position(顎関節の位置)
Target tooth / bone(移動目標)
TADs number(アンカースクリューの設計)
Observation of tongue(舌機能)
No tooth-borne expander(歯支持型拡大装置をできるだけ用いない)

診断の段階で治療結果の方向性の多くが決まるという考え方が強調されていました。


Tweed-MAC分析とはどのような診断法?

今回の講演で特に印象的だったのがTweed-MAC分析です。

Tweed-MACは

Tweed
Merrifield
Alexander

といった矯正学の重要な概念をベースに発展した診断法です。

Tweedは下顎前歯の位置と骨格の調和を重視し、治療後の安定性を重視した診断法を提唱しました。

Tweed triangleでは

FMA
FMIA
IMPA

といった角度を評価し、抜歯・非抜歯の判断に応用されます。

Merrifieldは顔貌の審美性に着目し、Z-angleという評価方法を提唱しました。

歯の位置だけでなく

口元の突出感
オトガイとの位置関係

を評価することで、横顔の調和を重視します。

Alexanderは10 key to orthodonticsという概念を提唱し、治療後の長期安定性を重視しました。

咬合関係
歯列弓形態
歯根平行性
正中一致

などを総合的に評価します。

Tweed-MAC分析ではこれらの考え方を発展させ

骨格
歯列
軟組織
顔貌

を統合的に評価します。

特徴として

口蓋平面を基準とした分析
19のセファロランドマーク
APセファロによる左右差評価

が挙げられます。

特に重要視されていたのがオトガイ部の評価です。

評価項目として

オトガイ角
chin-labial angle
軟組織厚
下顔面高
下顎平面角

などが挙げられます。

骨格の移動量と軟組織の変化は必ずしも一致しないため、軟組織評価を含めた診断が重要になります。


Tripod principleとはどのような考え方?

Tripod principleとは

上顎
下顎
頭蓋基底

の関係を三脚のように安定させるという考え方です。

特に

開咬
骨格性Ⅲ級
咬合平面の傾斜
臼歯の挺出

といった難症例において重要になります。


TSAD(Temporary Skeletal Anchorage Device((矯正用アンカースクリュー)を使用することで

臼歯の圧下
遠心移動
垂直的コントロール

が可能になります。

三次元的なコントロールにより、従来では外科矯正が必要と考えられていた症例でも非外科的に改善できる可能性が示されています。

TSADを用いた矯正治療の可能性とは?

講演では、最小限の装置で最大の結果を出すという考え方が紹介されました。

アンカースクリュー2本とワイヤー1本のみで歯の移動をコントロールした症例や、再矯正症例を比較的短期間で改善した症例などが提示されていました。

Twisted PICE wire
reverse curve mechanics

といった力学的工夫により、歯槽骨への負担を抑えながら歯を移動させます。

力のかけ方を精密に設計することで、より生理的で安定した治療結果につながる可能性が示されていました。


上顎骨拡大装置ATOZ Expanderとは?

骨格性狭窄に対する治療としてATOZ Expanderが紹介されました。

ATOZ ExpanderはTSADを併用した骨格性拡大装置であり、歯ではなく骨に直接力を作用させる設計となっています。

従来の拡大装置では

歯の傾斜
歯周組織への負担
後戻り

が問題となる場合があります。

ATOZ Expanderでは骨格レベルで拡大を行うため、より安定した結果が期待できます。

講演では

MSE
C-expander
ATOZ Expander

など複数の装置が比較されていました。

特にATOZ Expanderは装置がコンパクトであり、口蓋が深い症例でも適用しやすい点が印象的でした。

臨床的には、拡大量が大きく必要となる患者さんほど口蓋が深いことが多く、エクスパンションスクリューのサイズ制約によって装置の選択肢が限られることがあります。

そのような症例において、装置がコンパクトなATOZ Expanderは有効な選択肢になり得ると感じました。

また今回の症例では、前方部の拡大が比較的大きく達成されている一方で、後方部の拡大量には差がみられるケースもありました。

Moon先生の報告にもあるように、後方部の拡大は咬合の安定や気道の改善において重要な要素とされています。

今回の講演を通じて、後方部の拡大コントロールの重要性を改めて認識しました。

前方部と後方部で拡大量をコントロールできるような設計や、後方部の拡大効率をさらに高めた改良型ATOZ Expanderが開発されれば、適応症例の幅がさらに広がる可能性があると感じました。

骨格性拡大は単に歯列の幅を広げるだけでなく

咬合の安定
顔貌のバランス
気道容積

にも影響する重要な治療要素です。

装置の特性を理解し、症例ごとに適切に選択することの重要性を改めて感じました。


矯正専門医としてどのように臨床へ活かすか?

当院でも非抜歯矯正を希望される患者さんは多く、診断の重要性を日々実感しています。

同じ叢生でも

骨格
口唇の厚み
オトガイ形態

によって治療方針は変わります。

メンターからも「診断が治療結果を大きく左右する」と指導を受けてきました。

今回の講演でも顔貌の調和を重視する診断哲学の重要性が繰り返し示されていました。

できるだけ歯を抜かない
できるだけ手術を避ける

という治療方針は患者さんにとっても大きなメリットになると考えています。

この研究は矯正治療にどう関係する?

今回の講演から分かることは、難症例でも治療の選択肢は一つではないということです。

抜歯が必要と言われた場合
外科矯正が必要と言われた場合でも

診断方法によっては別の治療方針が見つかる可能性があります。

矯正治療では

歯並び
骨格
筋機能
気道
顔貌

を総合的に評価することが重要です。


まとめ

今回の講演ではBiocreative Orthodontic Strategyに基づく非外科矯正による難症例治療の可能性について理解を深めることができました。

特に印象的だった点

Tweed-MACによる三次元的診断
Tripod principleによる骨格コントロール
TSADを用いた力学設計
ATOZ Expanderによる骨格性拡大

矯正治療は日々進歩しており、診断技術の進歩によって治療の可能性は広がっています。

今回の学びを日々の診療に活かしていきたいと思います。


川西市・池田市・伊丹市・宝塚市・猪名川町・豊中市・箕面市などで
小児矯正、マウスピース矯正(インビザライン)などの矯正治療をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

スマイルプラス矯正歯科では、矯正専門医が歯並びやかみ合わせを丁寧に診断し、患者さんにとって最適な治療方法をご提案しています。

なるべく歯を抜かない矯正治療(小臼歯非抜歯矯正)を希望されている方

他院で「抜歯が必要」と言われた方

他院で「マウスピース矯正」は難しいと言われた方

他院で「様子を見ましょう」と言われた方

も、一度ご相談いただければと思います。

矯正相談では、歯並びやかみ合わせの状態を確認し、現在の問題点や治療の選択肢について分かりやすくご説明しています。

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スマイルプラス矯正歯科
院長 山本昌宏
(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医・アラインファカルティ)


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