Invisalign Clinical Essentials Faculty Editionに参加しました |臨床でつまずく壁とその乗り越え方
こんにちは。
川西市の矯正歯科、スマイルプラス矯正歯科の山本昌宏(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医)です。
2026年7月16日、
TKPガーデンシティPremium京橋で開催された
「Invisalign Clinical Essentials Faculty Edition」に参加しました。
今回は、牧野正志先生による、
「臨床でつまずく壁とその乗り越え方 ― ICEセミナーより ―」
を聴講しました。

牧野正志先生による、「臨床でつまずく壁とその乗り越え方 ― ICEセミナーより ―」の講演。
牧野先生は、Align Faculty(アラインファカルティ。日本では一般には「インビザラインファカルティ」と呼ばれることもあります)として教育活動にも携わっておられます。
講演では、日常臨床で遭遇しやすい問題点について、症例を交えながら分かりやすく解説していただき、多くの学びがありました。
アライナー矯正にも「得意」と「苦手」があります
インビザラインは非常に優れた矯正装置ですが、すべての歯の移動が同じように得意というわけではありません。
講演では、
- 空隙歯列
- 軽度のⅡ級症例
- 開咬(オープンバイト)
などは比較的予測性が高い一方、
歯の回転は難しい歯牙移動の一つであることが紹介されました。
しかし、その中でも上顎中切歯の翼状捻転(Wing Rotation)は、アライナー治療が得意とする歯牙移動の一つとして紹介されました。
「作用」だけではなく「反作用」も利用する
今回、私が最も印象に残ったのは、この翼状捻転の考え方です。
矯正治療では、
歯を動かせば必ず作用と反作用が生じます。
通常であれば、その反作用をできるだけ少なくするよう治療計画を立てます。
しかし牧野先生は、
翼状捻転を改善する際に生じる反作用を、
前歯の圧下が必要な症例では、むしろ治療に利用する
という考え方を示されました。
私は以前から、
「作用だけではなく、反作用も治療に利用できないか」
という考え方が好きです。
反作用を単なるデメリットとして考えるのではなく、
治療をより効率良く進めるための力として利用する。
非常に合理的で、共感できる考え方でした。
ClinCheckは術者によって大きく変わります
今回の講演でも改めて感じたことがあります。
それは、
同じインビザラインという装置を使用していても、ClinCheck(治療計画)は術者によって大きく異なる
ということです。
患者さんの中には、
「インビザラインなら、どこの歯科医院で治療しても同じ」
と思われている方も少なくありません。
しかし実際には、
治療計画は術者の診断によって決まります。
診断が違えば、
治療目標が変わります。
治療目標が変われば、
歯の移動量も変わります。
そして、その歯の移動を達成するための
- アタッチメント
- ステージング(歯を動かす順番)
- アンカレッジ(固定源)
の設計も変わります。
つまり、
同じインビザラインでも、治療内容は術者によって全く異なるのです。
私が考えたこと
講演を聞きながら、一つ考えたことがありました。
それは、
治療開始時に翼状捻転が存在しなくても応用できないだろうか
ということです。
例えば、
ClinCheck上で一時的にオーバートリートとして翼状捻転を作製し、
その改善過程を利用して、
- 上顎前歯の後退
- 前歯の圧下
を同時に達成できれば、
新しい治療戦略になる可能性があります。
もちろん、生体反応やアライナーの追従性など検討すべき点はありますが、
今後さらに考察してみたいテーマの一つとなりました。
TADsは矯正治療の可能性を広げる装置です
講演後半では、TADs(アンカースクリュー)の活用についても解説がありました。
牧野先生は、
「TADsは最初から必須ではなく、必要になったときの保険として考える」
という考え方を示されました。
TADsの活用方法は、術者によってさまざまです。
ほとんどすべての症例で積極的に使用される先生もいらっしゃいますし、
必要になった時点で使用するという考え方の先生もいらっしゃいます。
どちらが正しいということではなく、
それぞれの診断や治療哲学に基づいた選択です。
私自身は、
TADsは矯正治療の可能性を大きく広げた装置だと考えています。
矯正治療では、
歯を動かすと反作用が生じます。
しかしTADsを固定源として利用することで、
反作用を気にせず歯を動かせるだけでなく、
場合によっては反作用そのものを治療に利用することも可能になります。
その結果、
- より大きな歯の移動が可能になる
- 治療期間を短縮できる場合がある
- 非抜歯矯正が可能になる症例がある
- 抜歯治療をより予測性高く行える
- 骨格性不正咬合では、症例によって外科的矯正治療を回避できる可能性が広がる
など、
従来では難しかった治療の選択肢が増えてきました。
もちろん、すべての患者さんに必要な装置ではありません。
しかし、必要な症例で適切に使用することで、治療の可能性を大きく広げてくれる装置だと考えています。
学びを患者さんへ還元するために
今回の講演でも、新しい知識だけではなく、
治療に対する考え方について多くの学びがありました。
私が学会や講演会へ参加する目的は、
新しいテクニックを覚えることだけではありません。
さまざまな考え方に触れ、
自分自身の診断や治療計画を見直し、
本当に患者さんにとって良い治療とは何かを考え続けることです。
これからも国内外の学会やセミナーへ積極的に参加し、学び続けることで、その経験を日々の診療へ還元し、患者さん一人ひとりにより質の高い矯正治療をご提供できるよう努めてまいります。
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院長 山本 昌宏
(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医)

